#021 僕の履歴は棚の中
December 20, 2016 - Hiroshi Nishimura
「皿ば送ろうか?」思い返せば、幾度となく聞いた母の言葉。皿とは、もちろん有田焼のことです。
僕は佐賀市生まれ。小学校卒業後に親元を離れ、中高の6年間は、お隣の長崎県で寮と下宿の生活でした。そして大学受験に失敗して浪人生活、東京の東中野で6畳一間のアパート暮らしの1年間を過ごしました。そこからずっと東京暮らしが続いていますが、その間、大学入学、就職、独立起業、結婚、離婚、再婚、子どもの誕生など、人生のいろんな節目がありました。だから、引越しも数えること、なんと12回。その度にいつも、母は電話をくれました。
母「皿ば送ろうか?」
僕「いんにゃ、あっけんよか。」
母「コップがよかね?」
僕「いんにゃ、よかて・・・笑」
こんな僕の親とのたわいもないやりとりを、ちょっと気になって、同じ佐賀出身で会社の仲間の田村柚香里さんに聞いてみたら、「うちもそがんやった!ばってん、要らんていうて断いよったばい」と。佐賀の家はみんなそうなのかもしれませんね(笑)。
お陰で、僕の家の棚には、たくさんの有田焼の器たちで溢れかえっています。人生の節目の数だけ有田焼があります。嬉しいことだけでなく、悲しいこと、辛いことも含めて、僕の棚には大切な思い出と時間が詰まっています。
母の少しの心配とたくさんの優しさと一緒に。