#012 「有田」というコンプレックス
February 09, 2016 - Motoyasu Sasaki
私はずっと、「有田」がコンプレックスでした。
だって、焼き物なんて古いし、ダサいし、つまらないでしょう。
そんな私の転機となったのは、2011年の東日本大震災。
当時、関東在住だった私は、友人と共にボランティアチームを立ち上げ、宮城県の南三陸という町へ月1回通う生活を始めました。最初は、あまりにも甚大な被害に心を痛めるばかりでしたが、次第に、町で出会う地元の人々の明るさと復興への決意の力強さ、そして大地震でも揺らぐことのなかった愛郷心に強く胸を打たれるようになりました。
「有田をよく知りもしないくせに軽蔑して、自分はなんて恥ずかしいんだろう。」と自省すると同時に、「自分も南三陸の人たちのように、地元を愛したい。地元のために働きたい。」と心境に変化が訪れました。
昨年9月より、私は「地域おこし協力隊」として地元の有田町へ戻り、有田焼の職人が作品に込める意志や有田を想う心に日々触れています。一枚一枚の皿には、言い尽くせないほど多くの想いが込められていることを、戻って来て初めて知りました。いま見る有田焼は、私のかつてのイメージと全く違い、めちゃくちゃクールでかっこいいです。コンプレックスなんかいつの間にか消え去っていました。
私はこれから、有田に住む子供たちが地元を愛することができるように小さなお手伝いを重ねていこうと思っています。まずは、有田焼がかっこいいことを知ってほしいです。そして、いつか「実は俺、あの有田出身なんだぜ!」と誇らしく話す若者の声が都会で聞こえたら嬉しいです。