#019 我が家の食器棚
December 13, 2016 - Natsuki Ando
愛知県に育ったぼくにとって、陶磁器と言えばこどもの頃から「セトモノ」。有田焼の存在自体は知っていたけれど、それがどんなものなのか、深く考えることもなく大人になりました。だから、我が家の食器棚には、当然のごとく有田焼なんてひとつもない。
その思い込みが間違いだと気づいたのはつい数年前のこと。仲良しのデザイナー、浜野貴晴さんが有田で仕事をするようになったことがきっかけでした。「この喜多俊之さんの皿は有田なの?」「えっ、永井一正さんのも?」「まさか、この白磁や古伊万里まで!」。ちゃんと調べて見ると、我が家にもたくさんあったんですね、有田焼。食器棚では北欧ものに続く一大勢力でした。そもそもモノを選ぶとき、質感やデザイン、使い勝手は気にするけれど、産地を意識することなんてほとんどなかったんです。それでも知らず知らずに買っていたわけですから、やはり有田焼には魅力があるんだと思います。
最近では、いいレストランや宿で有田焼をよく見かけるようになりました。仕事で訪れる有名ブランドのイベントなどでも、よく使われています。もしかすると、単にぼくが気づかなかっただけで、実はずっとそこにあったのかもしれない。浜野さんに有田焼を教わり、産地を訪ね、陶助おこしを食べることで、なんとなくですが「ほかの産地のものと何か違う」と気づけるようになったのかもしれません。その違いとは何なのか。いまはまだ、ぼくにはうまく説明できないんですが、デザインとか、そういう単純なものだけではないと思います。
その証拠に、先日発表された「2016/ 」は、世界中のいろいろなデザイナーが関わったプロジェクトながら、やはり有田を感じる"何か"がありました。ぼくはインゲヤード・ローマンがデザインした白と黒のお皿を1枚ずつ家に持って帰ることにしました。本当は、ティーポットも欲しかったけれど、それはまたいつか。こうして、我が家の食器棚は、さらに有田焼優勢になっていくのでした。
※写真1 我が家では主に冷酒を楽しむ際に使われている古伊万里の急須と蕎麦猪口。白磁の蕎麦猪口は酒以外にも用途を選ばず便利。
※写真2 北欧を代表するデザイナーのひとり、インゲヤード・ローマンがデザインしたプレート。「2016/ 」の中のひとつで、今一番のお気に入り。