#017 母と、娘と、娘と。
October 19, 2016 - Ami Otonari Ishikawa
私の有田の思い出といえば「竜門峡」。皆さんご存知でしょうか。有田から車でわずか15分の距離にある、黒髪山の麓にある渓谷です。
佐賀市内で代々旅館を営む私の家族の毎年の恒例は、有田陶器市。そう、例年全国から100万人以上が訪れる、かの有名な焼き物市です。私の両親は、お客様にお出しする器を求めて、幼い私と妹を連れ、毎年有田を訪れていました。母は器選び、父は器運びに忙しい中、私たち姉妹ふたりがいつも遊んでいたのが竜門峡です。今となって考えると、小さな子どもを山の中に数時間おいて親は買い物へ、なんてびっくりする話ですが、森とせせらぎに見守られて、私たち姉妹は時間を忘れ、渓流でのおままごとや水遊びを大満喫していたものです。
そんな私も10代に入ると、母の器選びについて行くようになりました。今右衛門窯、源右衛門窯、しん窯、卸団地の金照堂とおきまりのコースを巡り、母が窯元やお店の方と談笑したり、「これもなかなか素敵ね」と器を選んだりする姿を見ていると、まるで母というマイスターに弟子入りしたような気持ちになったものです。そして、20代になると、東京で暮らす自分用にと、母と一緒に器を選び、買い集めるようになりました。そんな思い出のつまった器たちを持って嫁入りし、私も今では2人の子どもの母親。
東京で育ったとしても、有田焼に囲まれ、その良さを理解し、器使いのできる娘に育てたいと思っています。でもその前に、まずは竜門峡へピクニックに連れて行かなきゃですね。
※ 写真は、源右衛門窯の庭にて、6歳の私と4歳の妹と。