#003 ランナーと絵付け職人
May 22, 2015 - Ryohei Fukae
私はランナーです。
走りながら何を考えているのか、聞かれることがよくあります。答えは、"接地"。つまり、地面に足裏を着く瞬間の地面の捉え方です。上げた足を下ろすときに、エネルギーをどうやって地面に伝え、反動をもらうかを、意識しています。
ある上絵付けの職人さんがおっしゃっていました。
「時々、"おっ!今の1本の線はうまく描けた!"と思うことがある。ところがそれをその器全体に発揮するとなると、なかなか難しいんだよ」と。
私も、"今の一歩はよかった"と思うことがたまにあります。接地時間が短く、うまく弾めたという感覚。これが7000歩続けば、結構速く10km走れるのに...。
それと、細かい文様を詰めて描くとき、はじめは辛く、だんだん気持ちよくなってきて、最後の方は描き終えるのが寂しくなるそうです。彼はこの状態を、「ペインターズ・ハイ」という造語で表現しました。走る人に置き換えると、「ランナーズ・ハイ」で、その経験回数が多い人ほどランニング中毒に陥りやすいという研究結果があります。彼はきっと、「ペインターズ・ハイ」を重ねながら、上絵付けの世界にのめりこんでいったのです。
有田には、ゴッドハンドがたくさんいます。その技術を理解したり説明したりするのは、結構難しいです。が、自分の得意な分野に置き換えて考えてみると、その感覚が共有できる気がして、何だか楽しくなります。
私は職人さんの話を聞く時間がたまらなく好きです。