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ARITAの風がイタリアに吹く。ミラノ万博での3日間。
有田焼の未来を担う有田窯業大学校生も参加したイタリア・ミラノ万博でのプロモーション。2015年5月末から3日間のイベント出展では、来場者を楽しませながら「ARITA」という陶磁器産地の名称を印象づけようと、有田焼を軸とした仕掛けを行った。その取り組みと現地での模様を紹介する。
ミラノ万博でのプロモーション
2015年5月31日から6月2日までの3日間、イタリアのミラノ万博(ミラノ国際博覧会)の日本館イベント広場にて、「ARITA PORCELAIN PARK in MILANO BY SAGA PREFECTURE」と冠したプロモーションを行った。10月末まで開催されているミラノ万博のテーマは「食」。日本食レストラン「美濃吉」には42種類の有田焼の食器も提供されている。今回は、佐賀県独自の展示として、佐賀県の食の紹介、試飲や試食イベントとともに、来場者に「有田焼」を最大限にインプットするパフォーマンスを展開した。
日本食レストランとフードコートに隣接したイベントスペースでは、伝統工芸士による「ろくろ」や「絵付け」の実演、美しい有田焼の背景をバックに撮影できるフォトスポット、さらに、次世代につながる有田焼の在り方を提案する仕掛けも現れた。それが「有田ポーセリン・カプセル2016」だ。
直径75mmのカプセルにこめられた想い
まだ有田焼を知らないヨーロッパの人々に、「ARITA」の名をいかに印象づけるか、その想いで採用したのが有田焼の「ガチャガチャ」だ。その名も「有田ポーセリン・カプセル2016」。きっかけは有田窯業大学校の授業で生み出された「ガチャポー」にある。「ガチャポー」とは、2016年に有田焼創業400年を迎えることを機に、学生たちが有田を広く伝える新しい形での商品として「ガチャガチャに入ったミニチュア磁器人形(ガチャガチャポーセリン)」を提案したものだ。400年前の当時の職人たちを描いた「染付有田皿山職人尽し絵図大皿」をモチーフに、有田焼職人の作業する姿と道具が8種のミニチュアで表現されている。
今回のプロモーションに際し、上記の「ガチャポー」のほか、有志の学生たちが新たに企画・製作したとっておきのアイテム、そして、窯元のセレクト品を計2016個のカプセルに詰めミラノに届けた。現地では、「何が出てくるか分からないガチャガチャの楽しさ」に有田焼の磁器の美しさも相まって、子どもから大人まで楽しめるコンテンツとして行列ができるほどの人気を博し、用意したカプセルは2016人の里親の元に引き取られていった。
また、有田窯業大学校からの代表として、この取り組みのきっかけとなったガチャポーの企画・製作を行った学生のひとりである橋岡恵さんと、新たにアイテムを企画・製作した有志の学生達の中から、陶片をモチーフにしたストラップを企画・製作した矢野李奈さんが、会場で有田焼のPRを行った。有田の町や歴史を知ってもらいたい、次世代に有田焼をつなげたいという学生たちの想いが込められた小さな有田焼という種が、海を越えたくさんの方々に届けられたことでひとつの実を結んだ。
ミラノ万博で得られた大切なもの
ミラノ万博では、白地に「ARITA」とブルーで表したロゴ、有田焼をイメージさせる絵柄揃いのハッピに身を包み、イベント会場も白とブルー1色で統一感を持たせた。多くの方々に「ARITA」の名を伝えることを意識した一つの会場で、スタッフが一丸となって来場者を楽しませながら、積極的にPRを行った。「毎回、ステージイベントをするたびに会場のよい空気感を感じた」と有田窯業大学校の三木悦子先生。
「心をこめてつくったものは、相手にも伝わるものだと改めて感じた。ヨーロッパの人々が有田焼を手に取った時どんな反応をしてくれるのか、これからの海外戦略の展開を考える上で参考となる得難い体験ができた」と、佐賀県の担当者、馬場英樹氏は語る。
ミラノにて発信した「ARITA」を収めた小さなカプセルは、有田のものづくりと作り手の想いも届けたに違いない。次世代の有田を担う若い世代が自らPRに挑み、海外での反応を見聞きする。そうして得られた経験と感性豊かな新しい視点が、これからの有田にとって必要不可欠なものとなるだろう。