有田焼創業400年事業 - 佐賀県が取り組む17のプロジェクト - ARITA EPISODE2 - 400 YEARS OF PORCELAIN. NEW BEGINNING. -
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有田焼400年の歴史

文: 木本 真澄

1637年―日本人陶工追放と藩の管理体制の確立

 有田焼の祖、李参平は朝鮮半島からやってきた陶工たちのリーダーでした。有田の泉山を発見し、磁器の生産に成功すると、鍋島藩主から金ヶ江三兵衛(かながえさんべえ)という日本名を授かりました。

 金ヶ江家に代々伝わる『金ヶ江家文書』によると、李参平は慶長の役の際に鍋島直茂の軍勢の道案内をしたと記録されています。そして、日本軍撤退の際、敵の手助けをしたことで、李参平らが土地の者たちから報復を受けるのではないかと心配した直茂が、李参平とその一族を日本に連れてきたと伝えられています。

 李参平らが入植する前、有田は人気のないところでしたが、磁器の生産が始まると入植者が増え「有田千軒」の賑わいを見せるようになります。当時貴重品だった磁器は高値で売れたため、有田の窯元や有田焼を扱う商人たちは大いに潤いました。そして、「運上金」と呼ばれる税金によって佐賀藩の財政も豊かになりました。

 しかし、磁器の生産が軌道に乗り、生産量が急増したことで新たな問題も生じてきました。磁器を焼くには1300度の高温で3日3晩、窯の火を燃やしつづけなければなりません。それには大量の薪を必要とするため、有田に多くの人々が移住してきて生産量が増えるとともに山が荒れるようになったのです。

 乱伐は土砂崩れや河川の氾濫を招き、麓の村や平野部の農業を台無しにしてしまいます。為政者にとって治山治水は磁器産業に劣らず重要な問題です。乱伐を防ぐため、1637年(寛永10年)、佐賀藩は家老多久美作守に命じ、日本人陶工を追放します。その数は実に826人に及び、藩の統制の厳しさをうかがわせます。朝鮮人と親戚関係の者だけが残ってよいこととし、窯場もいまの有田の中心地区の13カ所だけに絞られました。

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 これにより乱伐は収まったものの、たくさんの陶工を失った有田の窯元では人手が不足し、生産量も運上金も減ってしまいました。ほどなくして多数の陶工たちが呼び戻され、運上金も増収となりますが、江戸の佐賀藩邸から山が荒れるのを心配する声があがり、1647年、再び陶工追放の案がもたらされます。

 追放を避けるために、国もとがとった方法は運上金値上げの提案でした。値上げに対して窯元からの反発は大きかったものの、佐賀藩士 山本神右衛門は窯元たちを説得することに成功します。その結果、翌年の1648年に山本が徴収した運上金は銀77貫688匁(現在の貨幣価値として、約1億5,500万円※1)となり、それまでの銀35貫目から倍増させることになったのです※2

 かくして山本神右衛門は初代「皿山代官」として江戸時代初期の有田の磁器産業の発展に貢献します。藩による日本人陶工の追放や運上金の値上げは、封建領主の横暴な措置とも受け止められますが、磁器産業の創成期に、このような原燃料の産地の管理や人材および品質を管理する体制がなければ、ここまでの産業として成長できなかったばかりか、磁器産業も有田の町も存在していなかったかもしれません。

 その意味で、早い段階から“マネジメント”の必要性を認識し、窯元らの反発にあいながらも交渉を重ね、統制をとっていった山本の存在、そしてその考え方を受け継いでいった佐賀藩と皿山代官の役割は大きいといえるでしょう。日本人陶工の追放は、当時の人々にとって過酷な措置であった一方、産業の礎を築くために有田皿山にとって重要な歴史の1ページといえるでしょう。

  • ※1 日本銀行金融研究所貨幣博物館HP
     >お金の歴史に関するFAQ」
     > Q5.江戸時代の一両の現在価値はどのくらいですか?
     江戸初期の銀1匁=2000円より算出。
  • ※2 有田町史編纂委員会『有田町史 陶業編Ⅰ』1985年、有田町
    山本神右衛門は1647年に初代皿山代官に任命され、1648年から有田に赴任する。
    これを機に佐賀藩の有田皿山経営が本格化する。
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