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アリラボ2016 産地報告会開催。3年間におよぶ有田焼創業400年事業から得たもの。
有田焼創業400年事業の8つのプロジェクトの参加事業者が、その成果を自ら報告する「アリラボ 2016 産地報告会」が開催された。2016年末をもって有田焼創業400年事業は終了したが、プロジェクトで得られた経験と知見を発展させ、次の400年に向けて、さらに挑戦していこうとする覚悟がそこにあった。
ついに最終回を迎えたアリラボ
2013年より佐賀県が推進してきた有田焼創業400年事業「ARITA EPISODE 2」は、2016年12月末をもって終了を迎えた。
プロジェクトの一つとして、伊万里・有田焼の産地事業者と外部有識者が集い、新しい価値を創造することを目指した「ARITA VALUE CREATION LAB(有田焼価値創造研究処) / 通称“アリラボ”」。「技術」「デザイン」「経営」の3つの視点から、新しいものづくりの動きを紹介する講演会や産地の課題などについて議論する場として、明日の産地を考えていくことを目的に活動するとともに、有田焼創業400年事業の各プロジェクトの中間報告会も行ってきた。
その最終回として、2016年12月21日、佐賀県窯業技術センターのホールにて、アリラボ 2016産地報告会「参加事業者が語る 有田焼創業400年事業とこれからのARITA」と題し、各プロジェクトの事業の経緯と成果が発表され、多くの来場者が熱心に耳を傾けた。
参加事業者が語る有田焼創業400年事業から得たもの
今回の報告会は、有田焼創業400年事業として、17におよぶプロジェクトが進行してきた中、そのうちの主たる8つのプロジェクトの参加事業者が、自らその成果を報告し、当ラボ座長であり、有田焼創業400年事業デザインディレクターの下川一哉氏、クリエイティブアドバイザーの倉成英俊氏との意見交換を行い、得られた経験や知見をプロジェクトに参加されていない産地内事業者や業界関係者と共有しようというもの。
各プロジェクトの持ち時間が30分程度なため、かなりタイトなプレゼンであったが、それでも5時間という長きにわたる報告会となった。終始、事業者による発表を聞いたが、プレゼンターの発表の巧さと口調の滑らかさに、これだけのプロジェクトを遂行してきたという自信の現れを感じた。
時間の制約があったとはいえ、2〜3年におよんだプロジェクトの経緯と成果を発表するには確かに短すぎ、消化不良だった感も拭えない。概要程度の情報しか持ち合わせない方々がその場で理解するのは正直、難しいと感じたが、あくまでもこれは報告会であって、本質的な知見のアーカイブ化と情報共有は、産地内の窯業事業者と佐賀県、窯業技術センターなどが一緒になって、これから行っていく上での序章にすぎない。
最後は、下川氏、倉成氏に加え、作り手の代表として佐賀県陶磁器工業協同組合の理事長である宝泉窯代表の原田 元氏、販社代表として肥前陶磁器商工協同組合の理事長であるKIHARA代表の木原長正氏、そして佐賀県有田焼創業400年事業実行委員会会長 志岐宣幸氏、佐賀県窯業技術センター所長 一ノ瀬弘道氏の6人によるパネルディスカッションも行われた。
有田焼の歴史を紐解けば、「挑戦と革新の継続が伝統であった」からこそ、我々もこの400年を機に有田焼の価値を見直し、その価値を伝えていくすべを学び、そして401年目から次の100年、400年に向けて、その第一歩を踏み出したにすぎないという、これからに向けた覚悟を見た。
世界から注目されるこれからの有田焼産地の動向
県の事業としてはこれで終了するが、プロジェクトの多くがその活動主体を参加事業者に移し、継続されていく。しかし「すべての事業を残していくことが目的ではない。うまくいったもの、そうでなかったものを見極め、場合によっては別々のプロジェクトが統合するなどして進化しながら、産地内の新しい動きが生まれていくことが望まれている」と倉成氏は語る。
県主導の事業は予算の問題もあり、単年度事業が通例であるが、複数年度にまたがり、これだけ大規模に展開した支援事業の新しい試みであるからこそ、国内外の窯業、伝統工芸、地場産業関係者からも高い注目を集めてきたのは当然のこと。プロジェクト終了後の有田焼産地の今後の動向にも、国内はもとより世界から厳しくも期待の目が向けられている。
各プロジェクトを牽引してきた外部ディレクター他、支援してきた関係者、そしてプロジェクトの参加事業者の多大な努力があって、有田焼創業400年事業は遂行されてきた。プロジェクトの旗の元、志を共有した人が出会い、集まり、そして苦労を共にして強固な関係性を築き、仲間となった。さらに彼らを支援し、産地内に新しい風を導いた外部の有識者とのネットワークも構築した。事業から得られた知見や経験、人との繋がりという成果をさらに発展させ、ARITAの新たな物語として、輝きに満ちた続編が紡がれていくことに期待し、事業終了に拍手とこれからにエールを送りたい。