有田焼創業400年事業 - 佐賀県が取り組む17のプロジェクト - ARITA EPISODE2 - 400 YEARS OF PORCELAIN. NEW BEGINNING. -
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2016/ project report 6

日本磁器発祥の地・有田で、陶磁器産業の未来を考える「国際陶磁器シンポジウム」世界初開催

オランダとの連携等によるプラットフォーム形成プロジェクト(2016/ project)の一環として、佐賀県有田焼創業400年事業実行委員会と、オランダの陶磁器開発支援機関であるヨーロピアンセラミックワークセンター(EKWC)との共催による初の大規模な会合「有田国際陶磁器シンポジウム(ARITA CERAMICS SYMPOSIUM)」が、2016年11月16日、17日の2日間にわたり、佐賀県窯業技術センターほか有田町内4会場にて開催された。

December 29, 2016
文: 浜野 百合子

キーワードは「cool」 地場で作り続けることの重要性

2016年11月16日〜17日、陶磁器業界に関わる製造業者、流通業者、文化施設や行政職員、デザイナー、芸術家など、さまざまな専門家が日本の磁器発祥の地である有田に集い、世界的に低迷する陶磁器業界が抱える諸問題の解決と将来の発展について議論する「有田国際陶磁器シンポジウム(ARITA CERAMICS SYMPOSIUM)」が開催された。

本件は、2013年11月に佐賀県とオランダ大使館と締結した「クリエイティブ産業の交流に関する連携協定」をベースに有田焼創業400年事業として取り組んでいる「オランダとの連携等によるプラットフォーム形成プロジェクト(2016/project)」の一環によるものであり、佐賀県窯業技術センターと、人的および技術的交流を推進するオランダの陶磁器開発支援機関 ヨーロピアン・セラミック・ワークセンター(EKWC)との共催により実現した初のシンポジウムだ。

初日に佐賀県窯業技術センターホールで行われた基調講演には、イギリス陶磁器製造業連合会会長であり、ロイヤルクラウンダービー社長のKevin Oakes(ケヴィン・オークス)氏、九州陶磁文化館館長の鈴田由紀夫氏、世界初のトレンド研究機関「サイエンス・オブ・ザ・タイム」の創設者であり、世界のトレンド学をリードするProf. Dr. Carl Rohde(カール・ローデ)氏が登壇した。

トップバッターとして基調講演を行ったケヴィン・オークス氏は、業務用食器のトップメーカー「スティーライト・インターナショナル」の前CEOとしての実績や、イギリス陶磁器のアイコンともいえる「ロイヤルクラウンダービー」を、企業としてまたブランドとして、どのように再建し成功に導いたかという体験談の中で、リストラなど企業としてのコスト削減、経営の見直しを敢行するほか、安価な輸入品ではなく、英国製の陶磁器を使うことを良しとするイメージアップ戦略を遂行したことを語った。競合他社の多くが中国生産に移行する中、英国内での生産にこだわることが付加価値となること。他社と異なるものに投資を行い顧客に価値をもたらす、投資と改革戦略の重要性について説いた。

続いて登壇した鈴田由紀夫氏も、英国製にこだわったオークス氏の戦略に同意し、有田の未来について「地場で作り続けることにいかに意味を持たせられるか、信念をもって作り続ける中に有田の目指す未来があるのではないか」という考えを示した。また有田焼の歴史を紐解けば、外部からの刺激が技術的・芸術的発展に寄与してきた過去があり、この有田焼創業400年事業もその延長にあると話した。

最後に登壇したカール・ローデ氏は、競争の激しいフラットな世界の中で勝機を見いだすには何が必要かをトレンドの視点から講演。「cool」をキーワードにイノベーションに基づくクリエイティビティの重要性を示唆した。さらに有田の地(地場)や陶磁器との経験を記憶に残るストーリーとしていかに仕上げるのか、そしてそれをどのように世界に伝え、ビジネスとして展開していくのか、と尽きない課題を提示した。

ストーリーがないところに栄光なし 目指すのはグローバルなニッチ市場

シンポジウム2日目の午前中は、経済、技術、アート&デザイン、ツーリズムの4分野に分かれ、招聘参加者による非公開の分科会。午後からは佐賀県窯業技術センターホールで分科会総括と全体会議でのディスカッションが公開された。

分科会総括では、在日オランダ王国大使館 報道文化補佐官であるBas Valckx(バス・ヴァルクス)氏の進行のもと、各分野の座長を務めた日本陶磁器産業振興協会会長でノリタケカンパニーリミテド顧問を務める山田陽一氏、佐賀大学大学院工学系研究科教授の渡孝則氏、オランダ国立陶磁器博物館館長のKris Callens(クリス・カレンス)氏、セーブル美術館館長のChristine Germain-Donnat(クリスティン・ジェルマン・ドナ)氏により、それぞれの分科会での議論内容が発表された。

基調講演にも登壇され、経済の分科会に参加したケヴィン・オークス氏からは有田焼について「展示会や製品そのものはとても素晴らしいが、誰が代表者でどこにコンタクトをとれば良いのか、どこで買えるのか、WEBサイトを検索してもわからない」と問題点を指摘される一幕も。「陶磁器産業が低迷する中、海外市場へ力を入れることは必須」「有田焼をラグジュアリーブランドとして確立」「価格競争に左右されない高いクオリティと魅力的なストーリーをアピール」「顧客に求められる、望まれるブランドになることが必要」など、パネラーの間で熱いディスカッションが交わされた。その他にも「ツーリズムの要素」「WEBの活用」「グローバルな言語での発信」「ブランドの可視化」「ものと向き合う日本独自の文化性」など、さまざまなキーワードが飛び交い、聴講者たちにも多くの気づきがもたらされたことと思う。

シンポジウム中盤には、プラットフォーム形成プロジェクトの一環として行われているクリエイター・イン・レジデンスの報告もあり、現在有田に滞在中のデザイナーFloris Wubben(フロリス・ウッベン)氏は、未だ手作業が残る有田のものづくりを目の当たりにし、インスピレーションを得て作品作りに生かしたことを発表。「手肌が感じられる愛情のこもった職人技に有田の意気込みを感じる。この非効率性は、弱みではなく有田の強み。有田の魅力として維持してほしい」と感想を語った。

特別ゲストとして今回のシンポジウムに参加した駐日欧州連合(EU)代表部通商・経済部長のTimo Hammaren(ティモ・ハマレン)氏は、「輸出産業で成功するためには、競争に巻き込まれないニッチはプロダクトをもっていることが必要」と示唆し、1日目の基調講演、2日目の分科会、全体会を通して、グローバルなニッチ市場の重要性に対する認識を新たにした。

世界的なトレンドとして「cool」というキーワードが挙げられる中、「cool」な陶磁器とは? 陶磁器におけるニッチなプロダクトとは?という問いかけに、有田焼産地のひとりひとりが、他人事ではなく自分の事として考え、答えを見つけていかなければならない。今回のシンポジウム開催は、新たなインスピレーションの源となるとともに、多様なジャンルの人々との貴重な出会いを生む場として大変意義深いものになったのではないか。

低迷する陶磁器産業において直面している課題の解決や、未来を見据えた建設的な議論を行う世界初の「有田国際陶磁器シンポジウム」開催を受け、最後にシンポジウム参加者の「共同声明」を発表し、今後もパートナーシップを構築することで陶磁器業界に刺激を与えるべく、産・学・官の代表者間の更なる意見交換を促進するため、「国際陶磁器シンポジウム」を2年に1度開催することを決定した。第2回目は2018年、「欧州文化首都」の開催都市であるオランダ・レーワルデンで開催される。

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