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400年目から繋がり拡がる「アリタノミライ」
有田の技と価値をリブランディングし発信した「ARITA Revitalization」プロジェクトと他産地・異業種の伝統工芸の作り手たちが恊働でものづくりに挑んだ「産地間コラボ事業」。この2つのプロジェクトの成果発表としてフォーラム「アリタノミライ」が有田町内の複数の会場にて開催された。400年から未来につなげ、拡がりをみせる新たな動きとモチベーション、そして有田の目指すビジョンとは。
リブランディングで生まれた「ものづくりと価値づくり」
2016年11月17日から19日の3日間にわたり開催されたフォーラム「アリタノミライ」。九州陶磁文化館で開催された有田焼創業400年事業「ARITA EPISODE 2」の取組・成果紹介や、有田の街中を回遊しながら、さまざまな店舗で食べ歩き・飲み歩きを楽しむ「バルウォークARITA in 大樽」とともに開幕した。
翌18日の佐賀県陶磁器工業協同組合の大会議室には「ARITA Revitalizationプロジェクト」15社(「つたうプロジェクト」11社と個別ブランディング4社)、産地間コラボ事業で誕生した9組の商品と、伊万里・有田焼伝統工芸士9名の商品が集められ、展示販売とパネルディカッションが行われた。
会場に展示された、白磁に始まり染付や色絵という有田400年で培われた技を、リブランディング事業のもとに新たなフォルムとコンセプトで再構築させた品々は、2014年10月よりメイド・イン・ジャパン・プロジェクトの代表・赤瀬浩成氏がコーディネートを務めたもの。デザインから流通、広報まで勉強会を重ねで誕生した商品は「単に新しい商品やブランドをつくるだけでなく、参加した15社それぞれに自社のものづくりの歴史をたどり、その歴史から見出した個々の強みを意識した商品づくりを行った」。2015年3月のテストマーケティングを経て2年にわたる東京でのインテリアライフスタイル展、2016年6月に開催した首都圏販売プロモーションイベント「アリタノカタチ」での販売でも好評を博した。
パネルディスカッションでは、プロジェクトに参加した事業者が「個別に成功事例を出すことで効果を波及させていきたい(陶悦窯)」「使ってもらう方に心の満足を与えられる焼き物づくりを目指したい(副久製陶所)」「プロジェクトは生き残りをかけた挑戦。作り方や売り方、働き方も論理的な構築により変えることで利益を出し、地域産業のモデル企業になりたい(文山窯)」といったプロジェクトから生まれたビジョンとモチベーションを紹介した。
職人技のコラボレーションから探る、次世代の「工芸」運動
一方、会場で来場者からも注目を集めたのは磁器という有田焼に止まらず、布やガラス、金属や漆、といった他産地の伝統的工芸品を組み合せ、意匠を反映させた商品たち。鹿児島県の本場大島紬、東京都の江戸切子、福井県の越前和紙、沖縄県の琉球絣(かすり)、石川県の輪島塗と山中漆器、奈良県の高山茶筌(ちゃせん)、富山県の井波彫刻、和歌山県の紀州漆器の9産地と伊万里・有田焼が「産地間コラボ事業」で協働し誕生した、佐賀から発信する新しい伝統的工芸品のブランドだ。パネルディスカッションに登壇した紀州漆器チームの谷岡公美子氏によると、リブランディング事業と同様に「アリタノカタチ」等で販売され、着実に売り上げを伸ばしているとの報告。「他産地とコラボするために、自らのものづくりのコンセプトとビジョンを明確に示す必要性を実感した」。
さらに産地間コラボ事業のもうひとつの柱である、次世代の有田焼産地を担う若手職人と他産地の伝統工芸関係者との交流による「人的交流事業」として、オープンファクトリー「職人現場検証」も併せて開催。フォーラムに参加した全国各産地のつくり手が、伊万里・有田の窯元や商社のスタッフの案内で、参加者が有田焼の魅力を探る「捜査員」として、窯元の生産現場などを見学。製造技術や商品開発・流通など、話し手・聞き手ともに「職人」ならではの話に花が咲き、交流を深めた。翌19日には月刊誌「目の眼」編集長の白洲信哉氏と工芸評論家の外舘和子氏、九州陶磁文化館館長の鈴田由紀夫氏のトークショーと続いた。
いよいよエンディングが近づいてきた有田焼創業400年事業。
この事業に深く関わってきた佐賀県陶磁器工業協同組合の原田元理事長は、有田焼創業400年事業を「産地の構成員全体に気づきと指針を与え、産地に活気を呼び起こした」と評価する。また伊万里・有田焼伝統工芸士会の大串惣次郎会長は「有田焼創業400年事業で生まれた、世界そして未来に向けた意識を継続させ、やきものを希望が持てる産業にしたい」と語る。
この有田焼創業400年事業が401年、402年と続く有田焼の未来への架け橋となり、日本人に世界の人々に愛される有田焼がいつまでも生まれ続けることを、願って止まない。