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メゾン・エ・オブジェの感動を再び!ARITA 400projectの成果披露から販売へ
2016年1月に3回目のメゾン・エ・オブジェ出展を果たし、世界に向けて継続的な発信を試みたARITA 400project。欧州の市場開拓と世界でのリブランディングを目指したプロジェクトの成果を、日本の地でも披露すべく、地元有田の九州陶磁文化館および東京・六本木の森アーツセンターギャラリーでの帰国展、東京・伊勢丹新宿店にて販売へと結びつけるイベントが開催された。
有田および都内2箇所で「メゾン・エ・オブジェ帰国展」開催
毎年フランス・パリで開催される国際見本市、メゾン・エ・オブジェへの3回の出展を通じ、世界に向けて新しい有田焼の発信を試みたARITA 400project。有田焼創業400年の節目となる2016年は、国内でもその成果を披露すべく7月1日から18日まで九州陶磁文化館、10月5日から11日まで森アーツセンターギャラリー、10月19日から11月1日まで伊勢丹新宿店で帰国展を行い、約3年にわたるプロジェクトを締めくくった。
日本での帰国展に際し、ARITA 400projectのプロデューサーを務める奥山清行氏は、「2014年9月の初出展のとき、世界からみた有田焼の認知度は低かった。参加した8事業者もまだ海外出展に慣れていなかったが、初めて肌で感じた文化の違いを新たな商品開発に生かし、2015年9月の2回目の出展に臨んだ。3回目となる2016年1月の出展には、ゲストクリエイターにも参加してもらい変化をつけた。ARITAのリブランディングと販路開拓に取り組んできたこの3年の成果を、ぜひ日本の皆さんにも見てほしい」と語る。
「戦略をたてて臨むこと」「継続して進化させること」「相手に伝えること」の大切さ
国内初のお披露目の場として選ばれたのは、有田焼の産地である佐賀・有田町。7月に九州陶磁文化館で開催された「ARITA 400project メゾン・エ・オブジェ帰国展」には地元の窯業関係者も多数来館し、新生ARITAの活動に関心を高めていた。初日に開催された参加事業者らによる報告会では、海外との取引体制を整え、オファーや問い合わせを得るに至った実質的な成果のほか、「戦略をたてて臨むこと」「継続して進化させること」「相手に伝えること」の大切さを皆が口々に語っていたのが印象的だった。この3年でそれぞれの世界観やブランドが目指すものなど各社の課題が明確になってきたことが伺える。同じ有田焼の産地事業者としてこれからのARITAを共に支える協働の意識も生まれてきた。
メゾン・エ・オブジェの世界観を再現した森アーツセンターギャラリーでの帰国展
首都圏では10月5日から11日まで東京・六本木の森アーツセンターギャラリーにて、「ARITA 400project メゾン・エ・オブジェ帰国展-伝統と革新-」が開催され、大々的に成果を発表。六本木ヒルズ森タワー52階という贅沢な空間で、新たな有田焼の世界観を表現し、会期中、6260人もの来場者を迎えた。
主に6つのパートに分けられた会場構成の導入は、山々に囲まれ豊かな資源に恵まれた産地の様子や有田焼400年の歴史を、大きなパネル写真やムービーで振り返りながら進む。すると次の空間には、柔らかに揺れる布地に絵付けや窯入れなどの作業風景を映し出すインスタレーションが待っている。メイン会場となる3つ目の空間には、パリで好評を博したメゾン・エ・オブジェ展示ブースの世界観を再現し、出展品の数々を一堂に披露した。
過去3回の出展の様子のビデオ上映や、窯道具の展示などものづくりを感じさせるパートを経て、次の空間に広がるのは、プロデューサーの奥山清行氏に加え、ビートたけし氏、隈研吾氏、佐藤可士和氏といった日本を代表するトップクリエイターとのコラボレーション作品を集めた特別展示だ。初めて間近で見るアートピースの数々に、来場者の感動もピークに達する。最後のパートには参加8事業者の目指す未来を紹介する展示を設け、有田焼の多様な可能性と魅力を訴求する展覧会に仕上がっていた。
佐藤可士和氏のDissimilarを新規にシリーズ展開、販売へ結びつける企画展
森アーツセンターギャラリーに引き続き首都圏で行われたのが、伊勢丹新宿店でのイベント「ARITA 400project × ISETAN SHINJUKU」だ。ここでは展示だけでなく販売へ結びつける試みとして、各階をまたぎ企画展示が行われた。
本館1階=ザ・ステージでは「クリエーターが描く有田焼」をテーマに、KEN OKUYAMA DESIGNによる普段使いのテーブルウェアの商品とともに、2016年1月のメゾン・エ・オブジェ出展時にゲストクリエイターとして参加した佐藤可士和氏の作品「Dissimilar」をシリーズとして発展させた商品が登場。新たに8つの窯元とコラボレーションし、鉢や花器、プレート、カップなど、約1300点におよぶ商品がこの日のために製作された。アートピースの大皿「Dissimilar」と同様、ひとつひとつに佐藤可士和氏自ら絵付けを施した1点ものが数千円から購入できると話題を集めていた。
その他本館5階では、参加事業者による既存商品の展示販売を行う「伝統×モダンの名窯の有田焼」、本館7階催物場では同じく有田焼創業400年事業の酒器プロジェクトから誕生した新ブランド「ARITA地の盃」や「おてしょ皿」などテーブルウェアとしての有田焼に注目した「マルシェで出会う日常の有田焼」、本館地下1階キッチンステージでは「料理と共鳴する有田焼」の企画を展開するなど各階で有田焼の魅力を発信。伊勢丹新宿店本館をぐるりと囲むショーウィンドーもARITA 400projectを紹介するティスプレイとなり、ビートたけし氏、隈研吾氏、佐藤可士和氏とのコラボレーション作品や、有田焼の歴史、窯道具などの展示で街行く人の目を楽しませていた。
有田焼創業400年を迎えた今年、メゾン・エ・オブジェ帰国展という形で、世界に向け進化する有田焼を国内に向けても発信したARITA 400project。2017年は有志によるメゾン・エ・オブジェ出展を予定しており、今後も更なる市場開拓と産業振興のため挑戦を続けることが期待される。