有田焼創業400年事業 - 佐賀県が取り組む17のプロジェクト - ARITA EPISODE2 - 400 YEARS OF PORCELAIN. NEW BEGINNING. -
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プロユースプロジェクト - NEW ARITA 400 “educe” プロジェクト - report 4

国内外のトップシェフが有田に集う― 世界料理学会 in ARITA 開催。

国内外のトップシェフが集結し自らの料理論・手法などを披露、これからの料理のあり方などを議論する「世界料理学会」が、有田焼創業400年を迎えた有田町で初めて開催された。料理人と有田焼の職人との交流、クリエイテビティの高まりから望む、うつわと料理、地域の可能性とは。

August 05, 2016
文: 宮崎 伸介

地方再生の成功モデルのきっかけは「料理人の勉強会」

季節外れの大雨と強い風となった2016年5月3日。有田町の「焱の博記念堂」はこの悪天候をものともせず、朝から国内外の料理人や料理の道を志す学生たち、有田焼の職人たちや多くのギャラリーで賑わいを見せていた。人々の「世界料理学会 in ARITA」への熱い期待が伺える。

世界料理学会は1970年代後半、スペイン北東部の人口18万人という小さな町、サン・セバスチャンに起こった「新・バスク料理運動」を端緒とする。地元にある食材とフランス料理を融合させて、新しい食文化を創造しよう、という運動だ。料理人たちは店に集まって、勉強会を開き、技術と知識を教え合い、街全体の料理のレベルが上がっていく。ついにはサン・セバスチャンは人口比でのミシェランの星付きレストランが最も多い街となり、ホテルなどの観光産業も発展。「食を観光資源として人を集めることに成功した街」として世界中から地方再生の成功モデルとして注目されることとなった。「料理学会」はこのサン・セバスチャンの研究会の精神を引き継いで生まれ、マドリッドをはじめとする世界中の都市に広まった。日本では2009年に函館で始まり、函館以外で開催されるのは今回初。やきもののまち有田での開催は、有田が料理人にとって「使いたいうつわ」が手に入るまちとして評価され、国内外から料理人が集う場所となり、有田の食や観光が発展していくことを目指し、開催された。

会場

テーマは「器と料理のマリアージュ」。佐賀の食材を使った料理も提供

「器(うつわ)と料理のマリアージュ」をテーマに始まった世界料理学会 in ARITAは、料理人からの発表、有田焼の職人を交えたトークセッションなどで構成。世界屈指の料理人アンドニ・ルイス・アドゥリス氏をはじめ、2日間にわたり15人が檀上にあがり自らの料理哲学やうつわと料理の関係性などについて発表した。佐賀県に関わりの深い料理人としては、佐賀県伊万里市の出身で、フランス・パリでミシュラン1つ星を獲得したレストラン「Sola(ソラ)」のオーナーシェフである吉武広樹氏、武雄市のイタリアンレストラン「souRce(ソース)」」のシェフ梶原大輔氏、太良町出身で「オーグードゥジュール メルヴェイユ 博多」のシェフ小岸明寛氏が登壇。トークセッションでは、プロユース食器の企画からデザイン、開発、販売まですべての領域を担う窯元・商社の合同チーム「ARITA PLUS(アリタプラス)」から原田吉泰氏(吉右ヱ門製陶所)、寺内信二氏(李荘窯業所)らが参加。料理人との共創により生み出したオリジナルの器を披露し、そのプロセスなどを料理人と振り返った。

また、国内19人のトップシェフが、自ら腕を振るい、ここでしか味わえない逸品料理を提供したARITAバルも行われ、来場者は、季節野菜の煮こごり、ブイヤベース、フォアグラの茶碗蒸しなど佐賀の食材も用いた和洋中25種のオリジナル料理に舌鼓を打った。

アンドニ・ルイス・アドゥリス氏
バル料理

料理人と「つながり」ができることで、拡がる可能性

世界料理学会 in ARITAの総合ディレクターを務めた日本料理店・銀座「六雁」総料理長の秋山能久氏は「有田焼が技術を連綿と後世に引き継いでいくことができたのは、時代や市場のニーズに対して柔軟に対応し、変化を遂げてきたからに他ならない」と評価している。自身も2011年に有田焼の職人の手仕事と最新のデジタル技術によるモデリングや石膏型切削などの複合で、有田焼による「球体」の五段重を実現させた。「この400年という節目に、有田焼のさらなる可能性の扉を開くことは、私たち料理人に課せらせた『役割』といえるのではないでしょうか」と語る。これまでの有田の常識に囚われず、新しい有田焼のビジネスモデルを構築するために商社や窯元たちが参加している「プロユースプロジェクト ―NEW ARITA 400"educe"プロジェクト―」も今年で3年を迎え、参加する窯元のなかからは「すぐに数字(売上)に表れることはないが、実際に料理人と『つながり』ができたことで、産地として、プロの料理人のオーダーに対応する、という体制と心構えができつつあるし、意識も変わって来た」という話も聞く。世界料理学会 in ARITAは、この創業400年という節目が有田と有田焼の職人たちの「意識転換」元年=EPISODE 2、と位置付けるイベントであり、明るい未来への契機となり得ただろう。

食器を手に取るトップシェフ

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