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トップクリエイターとのコラボレーションも話題に。集大成となるMaison & Objet パリへの3回目の出展。
フランス パリにて、年2回開催される世界最大級のインテリアやデザインなどの国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」。欧州の市場開拓と世界でのリブランディングを目指す「ARITA 400project」では、2014年からブースを構え、2016年1月、ここに3年連続の出展を果たした。今回は、本プロジェクトのプロデューサーである奥山清行氏に加え、日本を代表する3人のトップクリエイターとのコラボ作品も特別展示され、国内外のメディアを通じ、話題を集めた。この出展が有田にもたらす成果とは。
過去2回の出展経験をもとにブラッシュアップされた400点におよぶ有田焼が来場者を魅了
毎年1月と9月にフランス パリで開催される「メゾン・エ・オブジェ」。世界中から家具、装飾品、テーブルウェアなどを扱う3,000社余りが出展し、80,000人を超える業界関係者が来場するライフスタイルの世界的なトレンド発信源である。
有田焼創業400年事業の一大プロジェクトである「ARITA 400project」は、2016年1月22日から26日までの5日間開催された「メゾン・エ・オブジェ パリ2016」に3回目の出展を果たした。
2014年9月展への初出展を皮切りに、2015年9月展と過去2回の出展で得た経験と海外での評価をもとに、その集大成として400点におよぶ商品や作品で臨み、世界へ向けて有田焼の真髄と革新を発信した。類まれなクオリティと美しさはブースを訪れた来場者を魅了していた。
昨年11月のパリ同時多発テロの影響もあり、来場者は例年よりも若干少なく、また入場時の手荷物検査など厳戒態勢の元での開催であったため、人の動きも過去2回とは異なり、参加事業者に戸惑いも生んだが、ARITAの魅力はそれをも凌駕し、会期中、感度の高い商談が数多く交わされた。
初日に開催した佐賀県主催のレセプションでは、山口祥義 佐賀県知事も来場し、400年の歴史を振り返りながら、今なお挑戦し進化を続ける有田焼をアピールした。参加したメディアからは「最近、ARITAの名前をよく聞く。皆、いいイメージで捉えており、ブランディングが進んでいる」、「伝統を残しつつ、新たなものに挑戦している姿がよくわかる」といったバイヤーの声など、高く評価されていた。世界的なハイブランドからの長期的な取引に発展しそうな引き合いもあり、海外での市場開拓に向けた新たな一歩として、着実な成果を上げてきている。
日本を代表するトップクリエイターとのコラボレーションによる意欲作も特別展示
今回の出展では、当プロジェクトのプロデューサーである奥山清行氏に加え、ビートたけし氏、隈研吾氏、佐藤可士和氏という日本を代表するトップクリエイター3名が、参加8事業者とのコラボレーションによって特別に制作したARITAの作品の特別展示も行われた。実現には、技術的に難しいデザインも数多くあったが、職人たちに脈々と受け継がれてきた高い技術と佐賀県窯業技術センターがけん引するデジタルデザインによる最新技術などを駆使し具現化した。展示会2日目に特別展示ブース前で開催されたカンファレンスには、山口祥義 佐賀県知事、奥山清行氏、佐藤可士和氏が登壇。プロジェクトの目指す姿や作品の意図を自ら語りかけ、詰めかけたメディアを含む多くの聴衆が人集りをつくり、熱心に耳を傾けた。来場者からは、海外でも名高いゲストクリエイターとのコラボ作品に対して「どのデザインもエレガントで美しい」といった声が数多く上がり、注目を集める展示となった。
会場での発表にあたり、ゲストクリエイター3氏からのコメントを以下に紹介する。
ビートたけし氏(コメディアン/映画監督)
「作品を見た人がそれぞれに何か感じてもらえればそれでいいと思う。異素材の日本の伝統工芸が組み合わさったら?こんな形の磁器があったら面白いのではないか?そういった思いつくままの発想で絵を描いてみた。たくさん描いた絵を有田の皆さんが見て、絵から感じたままに形にしてもらった。それぞれの事業者の捉え方が作品に出てくるのが面白い。」
隈研吾氏(建築家)
「作品名は、『波』。土にどこまで軽い表情を持たせられるかが課題であった。シェル状の器をフレームの集合体に置換し、器に軽やかさを与えることを目指した。今回デザインした器は、その実現に当たってかなり技術的に難しいものであったと思うが、コンピュータをベースとした最新技術と、伝統に裏付けられた高い技量が実現に導いてくれた。有田は、長い伝統を持ちながら、常にそれを超える挑戦をしている。」
佐藤可士和氏(アートディレクター/クリエイティブディレクター)
「13の作品群からなる一連のコンセプトは『Dissimilar(差違)』。革新と伝統、偶然と必然、過去と未来、混沌と清寂、永遠と束の間など相反する要素を内包した。今回のコラボレーションにあたっては、有田焼の持つ歴史、伝統、特徴的な技法や色を活かしながら、力強くも繊細で、インパクトのある仕上がりとなるよう、デザイン・バイ・アクシデントとデザイン・バイ・ロジックの相反する方法を取り入れた。」
出展を重ね感じたこと、見えてきたもの、そしてその先にある未来
海外での展示会では、継続して出展していることが信頼につながり、商談へ導くと言われる。一度きりでの出展では、ブランドを覚えてもらうことすら難しい。3年にわたり、パリの地でARITAの果敢に挑戦する姿を魅せ、商品や作品を通じて作り手が自らのものづくりについて語り続けてきたことは、回を重ねるごとの来場者の反応の変化にも現れていた。400年もの長きにわたり生産を続けてきた、日本の一陶磁器産地であった「有田」を初めて知り、目にしたという来場者も多かった初回から、前年の展示に惹かれ「ARITA」ブースを目指してきたというリピーターが現れた2回目、そして前回見たあの商品を目的に、早々に取引条件を話し始めるバイヤーの姿もあった3回目と、来場者の認知度の高まりは、商談へと結びついた。
参加事業者も、来場者からのダイレクトな反応を吸収し、パリの地で発表するに適した商品とは何かを考え、過去にとらわれず新しい商品開発に反映してきたのはもちろんのこと、商品を理解してもらい、覚えてもらうための資料づくり、商談でのバイヤーの意見を書き留め、事後の応対へと繋げるコンタクトシート等の改良と、毎回、スムーズな商談に進むためのビジネスへの努力も惜しまず重ねてきた。それらは、実質的な売上という成果とともに、海外へ出展して自らの商品を売り込み、帰国後の対応から受注へとつなげた経験という得難い成果へと昇華した。
パリでの評判は、国内にも伝播しており、今後、ARITA 400projectでは、出展された製品や作品を見たいという国内からの声に応え、首都圏および佐賀県内での帰国展も企画しており、さらなるARITAの広がりを生み出そうとしている。