有田焼創業400年事業 - 佐賀県が取り組む17のプロジェクト - ARITA EPISODE2 - 400 YEARS OF PORCELAIN. NEW BEGINNING. -
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有田焼創業400年事業の最新情報をお届けします

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016
2016/ project report 3

インゲヤード・ローマンが伝えるものづくりの神髄

「2016/ project」に参加するスウェーデン人デザイナー、インゲヤード・ローマンが、有田へ二度目の来訪。2015年10月3日に九州陶磁文化館で講演会を、翌日10月4日には、インゲヤードにとって初の試みとなるワークショップが伊万里の瀬兵窯で開催された。

March 25, 2016
文: 浜野 百合子

「使われて初めて自分のデザインの価値が生まれる」 — インゲヤード・ローマン

「2016/ project」に参加し、有田の窯元とものづくりを進めている、北欧を代表するデザイナー、Ingegerd Råman(インゲヤード・ローマン)。二度目となる有田への来訪では、商品開発の進捗を確認するだけでなく、デザインとモノづくりが交わるプラットフォームづくりの一環として、講演会やワークショップの講師を務めた。

インゲヤード・ローマンは、スウェーデン政府からプロフェッサーの称号、スウェーデン王室からThe Prince Eugen Medalを授与されるなど、由緒あるガラス・陶器デザイナーのひとりだ。「使われて初めて自分のデザインの価値が生まれる」という彼女のものづくりの姿勢は、日本でも多くのファンを増やし、その普遍的でシンプルなフォルムが賞賛されている。

プロジェクト始動

インゲヤード・ローマンが語る「デザイナーにとって大切なこと」

10月3日、九州陶磁文化館で開催された講演会には、産地の事業者のほか、東京、岐阜、広島福岡など各地から多くの人が聴講に訪れ、その人気の高さを伺わせた。

2016/ projectクリエイティブ・ディレクターである柳原照弘氏のファシリテートのもと進行した講演会では、作品が生み出されるスタジオの様子や、代表作、その他プロジェクトなどをスライドで紹介しながら、彼女のものづくりのプロセスが語られた。

Skruf社やOrrefors社などで活躍したガラスデザイナーとしてのイメージが強いインゲヤードだが、大学時代には陶器とガラスの両方を学び、陶芸家としての創作活動に重点を置いていた時期もあるという。

約10年、陶芸職人としてものづくりをした経験が、その後のガラスデザイナーとしての仕事に大きく影響を与えたと語るインゲヤード。「自ら職人として手を動かし、ものづくりをしたからこそ、ガラス職人たちの考えが汲み取れるようになり、単なるデザイナーと職人という関係以上の意識の共有ができるようになった。それは、デザイナーとしてとても大切なこと」と話すインゲヤードの言葉に、有田でのものづくりのあり方を考えさせられる。

職人との信頼関係が生み出す、ポテンシャルの高いものづくり

「一緒の時間をすごし、食事をし、語り合う。そうすることで、お互いの理解が深まり、信頼関係ができるので、一歩踏み込んでつきあうことができるようになる。それは、心地よいものづくりをするためのベースとなります」。こうした職人とのコミュニケーションを大切にするインゲヤードのスタンスは、2016/ projectにも大きく影響を与えている。

ディレクターの柳原氏は、「いつもにこやかで、物腰の柔らかいインゲヤードですが、ものづくりの現場での視線は非常に鋭く、厳しい要求を出してくることもあります。でもそれが、窯元の技術を引き上げる良いアイデアになっているんです」と付け加えた。

誰よりもアグレッシブに取り組むインゲヤードの姿勢に影響をうけて、よりポテンシャルの高いものづくりが進行していることを想像できるだろう。

酒蔵
勉強会

インゲヤード・ローマン初の「ものづくりワークショップ」

講演会の翌日は、伊万里の瀬兵窯にてインゲヤード自身初となるワークショップが開催された。インゲヤードのアドバイスを受けながらアイデアを膨らませ、彼女の考えるデザインやものづくりのプロセスを体験する、なんとも贅沢なこの企画。

当日はお天気にも恵まれ、15名の参加者と屋外で一緒にランチを食べるところからスタート。共に食事をし、語らうことを大切にするインゲヤードのスタンスが貫かれたワークショプの始まりだ。

食後のコーヒーを楽しむ中、発表された今回のテーマは「水を飲む行為」。誰と、どこで、どんなふうに飲むのか。水にまつわる記憶を紐解きながら、まずはスケッチを描いていく。

参加者は、ものづくりに興味がある人、窯業を勉強中の人、クリエイターなど、デザインに対する習熟度はさまざまだが、インゲヤードがひとりひとりに声をかけ、コンセプトを聞き、共に考えを巡らせる。

形が決まったら、窯元の若手職人たちに手伝ってもらいながらのろくろ体験だ。なかなか思ったような形にならないが、「土に触れながら考えればいい。私はいつもまずろくろをひいてみるの」と話すインゲヤードのデザインプロセスを追体験し、手を動かすことによる新たな気づきも得たようだ。

新たなエッセンスを加え、継続して作り続けることの大切さ

ワークショップのテーマ「水を飲む行為」は、非常にインゲヤードらしさを感じる提案だった。

「自分が欲しいと思うもの」「生活に役立つもの」をベースに、「基本コンセプトは同じでも、少しずつ改良しながら継続して作り続ける」のがインゲヤード流のものづくり。伝統技術に敬意を評しつつ、そこに新たなエッセンスを込めてプロダクトがアップデートされていく。

これは、ARITAが目指す「これからの100年につながるものづくり」にも通じる考え方だろう。有田焼創業400年の節目となる2016年、インゲヤードと過ごしたこの2日間の体験は、今回柳原氏がかかげたキーワード「A View from Above」のように、俯瞰した新たな視点を有田にもたらすきっかけのひとつとなったのではないか。

10月25日には佐賀大学美術館で、同じく2016/ projectに参加するドイツ人デザイナー、ステファン・ディーツによる講演会が開催され、未来を担う地元の学生たちにもARITAの試みが伝えられた。

試飲会

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