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今あるもので何ができるか。有田をリブランディング。
2016年、創業から400年を迎える有田焼。次のステージ「ARITA EPISODE 2」へと踏み出した今、有田の窯元たちがそれぞれの個性を知り、400年で培った伝統技と価値を再認識して、国内で再び勝負に出るためのリブランディングに取り組んでいる。「ARITA Revitalization」のプロジェクトの活動を紹介する。
窯元の個性や価値、本質への気づきが大切
「ARITA Revitalization」は、「有田の再活性化」を目指すプロジェクト。「ARITA EPISODE2」の重要な取り組みのひとつだ。世界を魅了してきた有田焼も「ライフスタイルの変化による和食器の需要減」「安価な輸入品の増加による競争力低下」「景気低迷による業務用食器の需要縮小」などにより、売上はピーク時の5分の1になり、苦戦を強いられてきた。「実際、国内での有田焼の認知度は低下している。窯元からも『祖父の時代はよかった』という閉塞感を感じさせる声を耳にする」と話すのは、メイド・イン・ジャパン・プロジェクト株式会社の赤瀬浩成氏。6年ほど前から有田焼の産地再生に関わり、有田焼創業400年事業である「ARITA Revitalization」プロジェクトのプロデューサーを務める。「400年の伝統に基づいたものづくりの技術や、品質のよさはそれぞれの窯元にしっかり根付いている。ただ、自分たちの個性や強みや価値のほか、ものをつくることは収入を得ることだという本質に、窯元たちに気づいてもらうことが大切だ」と、プロジェクトの意義を語る。
時代に合わせてブラッシュアップ
「ARITA Revitalization」プロジェクトには「つたうプロジェクト」と「リバイタライズ・プロジェクト」の2つの柱がある。
「つたうプロジェクト」では窯元の歴史を振り返り、既存商品を掘り起こして、「今あるもの」で何ができるかを考え、それぞれの強みを活かして個別、さらに窯元全体を対象にしたブランドを構築して、市場において有田焼の再興を目指していく。
第1期生6窯元は2014年10月にスタートした。「それぞれの強みが何か、窯元のコンセプト、ロゴや会社理念なども見直して言葉にし、紙に落としていく細かい作業を続けた」と赤瀬氏。「結果として、それぞれの個性や立ち位置が明確になった。これまではどの窯元も同じ方向を向いていたために、地域間で価格競争になっていた」と話す。さらに「個別のブランディングが出来れば、自信を持って『うちの窯元に来てほしい』という誇りと、モチベーションができる。売れる売れないより、もうひと踏ん張りしようというやる気につながっていく」と、この半年強のプロジェクトで窯元が明るくなっている、と手ごたえを感じている。
見せ方や売り場一つで人が持つ有田焼のイメージが変わる。今年3月、再構築した新ブランドを携えて、東京ミッドタウンでテストマーケティングを行った。その結果から問題点を洗い出し、再度ブランディングに磨きをかけて、6月には東京ビッグサイトで行われたInterior Lifestyle Tokyo 2015へ出展した。窯元自ら来場者に説明し、直接反応を見たことで、自信を感じ始めている。今後は展示会でつながった小売業者と具体的な商談を進めていく。
ポテンシャルが高い有田
「リバイタライズ・プロジェクト」には2社が参加している。経営問題の洗い出しや現場改善を平行して行い、問題点を明確にしながら、既にある魅力を発掘して再編集していく。担当する南雲朋美ディレクターは、2社の工場で実際に行われる作業を事業者と共にしながら問題点の分析や戦略の立案を行った。「日本の伝統産業に携わる人によくあることだが有田も同様で、マーケティングやIT関係が苦手な人が多い。でも、それはたまたま触れる機会がなかっただけのことで、合理的な考え方やPCの便利さを知ってしまうと、水を得た魚のように動き出す。例えば、製作工程の非効率さがわかると、作業指示書を作成するなどして問題を解決したり、パワーポイントで資料をつくったり、おもしろみが出てくると次へのチャレンジにつながっていくようだ」と南雲氏。「地域のポテンシャルは高い。自分たちには伸びしろや可能性があることを知ってほしい。会社は社会のためにある。付加価値を上げて儲けが出れば社会に還元する役目も果たし、自分のためにもなる」と強調する。
「世界の有田」の復興目指す
窯元の成功例が出てくれば有田全体にも波及効果がある。有田に変化があれば、国内市場復興につながる。今後、今年7月から始まる第2期生、さらに第3期生とつながって、有田焼創業400年を迎える2016年には、「簡単なことではないと思うが、個別ブランディングのベースができて、独り立ちできるようにサポートしたい。うさんくさがらずに、声をかけてほしい」と笑顔で話すお二人。地元住民に対しては「有田焼のよさは灯台下暗しで知らない人が多いかもしれない。どこの窯元が何をやっているのか見届けに行くことが刺激になる」と今後の動きに期待し、「世界の有田」の復興を目指していく。