有田焼創業400年事業 - 佐賀県が取り組む17のプロジェクト - ARITA EPISODE2 - 400 YEARS OF PORCELAIN. NEW BEGINNING. -
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有田焼創業400年事業の最新情報をお届けします

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焼き物文化の発信 report 1

職人のプライドをかけた一流のものづくり。有田・伊万里・武雄・嬉野―産地の個性輝く特別企画展「白き黄金」。

ヨーロッパの王侯貴族たちを魅了し、「金」に匹敵するほどの高値で取引されたことから「白き黄金」と呼ばれた有田焼。その呼び名を冠した特別企画展が佐賀県立九州陶磁文化館で開催された(会期:2014年10月4日~11月24日)。主催した同館の鈴田由紀夫館長に本展に込めた思いを聞いた。

March 31, 2015
文: 木本 真澄

四大産地の個性ある作品が訪れる人を魅了

世に言う「有田焼」の産地は、実は行政区分の有田町よりも広い。有田、伊万里に武雄、嬉野を加えた、生産量の多い四大産地の磁器に光を当てた特別企画展「白き黄金」が2014年10月4日~11月24日の間、佐賀県九州陶磁文化館で開催された。

本展では、柿右衛門、今右衛門に代表される華やかな有田焼や、格調高く精緻な作品が連なる伊万里焼に加え、それらとは趣を異にする武雄焼や肥前吉田焼も独自の存在感を示した。武雄・含珠焼の透かし紋様の「超絶技巧」は見る者を感嘆させ、嬉野・志田窯で作られた、愛嬌たっぷりの大黒・恵比寿の染付大皿は見る者の微笑を誘う。

多彩な作品が観る人を魅了したが、それらの作品が生まれてきた背景には「地域のプライドがあり、そこから生まれる競争意識が、至高の焼き物を生みだす大きな原動力となってきた」と、九州陶磁文化館の鈴田由紀夫館長は言う。

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産地間競争がブランドに磨きをかける

有田で磁器原料となる泉山陶石が発見され、日本で初めて磁器の生産に成功した江戸前期から、有田町周辺でも磁器が焼かれ始めていた。しかし、最高品質の泉山の陶石を使えるのは鍋島本藩直轄領の有田と、将軍家への献上品を作る伊万里大川内山の藩窯に限定され、それ以外の支藩の領地、現在の武雄市や嬉野市にあたる地域ではそれよりも劣った地元の陶石しか使えなかった。また、色彩豊かに着色された「赤絵」も、有田の赤絵町だけに制限され、他の地域では作ることが禁じられていた。条件的に不利だった武雄や嬉野の窯では日用雑器が多く焼かれていたのだ。

ところが、『白き黄金』展では、武雄や嬉野の作品のほうが、来館者を驚かせることになった。鈴田館長は、「武雄や嬉野からは、芸術性の高い作品はそれほど数が集まらないと想定していたのに、いざ集めてみたら数多くの一流品があることがわかった。不利な条件のなかで、なんとかしていいものを作ろうとしてきた陶工たちの情熱は胸を打つ」と語る。

「嬉野の吉田山では1650年代から赤絵付けに成功していたが、1660年代になると、赤絵は本藩直轄の有田の赤絵町だけに制限されてしまう。中国の政変の影響で、ヨーロッパから大量の赤絵の注文があった頃だから、赤絵を諦めなければならなかった窯元や陶工たちはどんなに悔しかったことだろう」(鈴田館長)

明治以降、武雄や嬉野からも優れた陶芸家が生まれ、商業的に成功している窯元がいることは、何世代にもわたって継承されてきたものづくりへの情熱と努力の賜物なのかもしれない。

一方、条件的に恵まれているとはいえ、常に最高レベルのものづくりを維持していかなければならない有田の窯元や伊万里の藩窯の受けるプレッシャーも大変なものだった違いない。このように、「常に熾烈な競争に晒されていることが、結果として有田焼の高い技術力とブランド力につながった」と鈴田館長は分析する。

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先端技術を駆使した新たな表現の可能性

本展では、猪子寿之氏率いる「チームラボ」によるデジタルアートの実演展示も行われ、話題を呼んだ。デジタルアートと焼き物がコラボレーションした「未来の有田焼があるカフェ」では、テーブルに有田焼の器を置くと、その絵柄に連動して蝶や鳥などのデジタルアートが動き出し、テーブルの上から室内空間へと広がるインタラクティブな表現で、従来とは違った焼き物の楽しみ方を創出し、新たなファンを導いた。この試みは、表現媒体として焼き物の持つポテンシャルを示すこととなった。デジタル技術の発達等により、さまざまなアート表現の可能性も広がっており、陶磁器の魅力を伝える手段として今後に期待が寄せられる。

1990年にピークを迎えた後、有田焼の販売額は下がり続けており、400年の歴史をいかにして次世代に受け継いでいくかは磁器産業の課題だ。鈴田館長は、「消費者のニーズや嗜好が多様化し、メディア環境が目まぐるしく変化するなかで、歴史を掘り起こしながらも新たな需要に結びつけ、ユーザーの裾野を広げていくことが急務」と熱を込める。

本展は、400年の長きにわたり最高の焼き物を生み出してきた有田焼の四大産地の個性に光を当てると同時に、デジタルテクノロジーとのコラボレーションを通じて、この先に広がる新たな地平を開拓して見せた。有田焼の魅力は、歴史のなかにあるのではなく、伝統を受け継ぎながらも、常に時代のトップランナーとして新たなチャレンジを続けていることにある。その鋭意こそが、有田焼を「白き黄金」たらしめていく。

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