有田焼創業400年事業 - 佐賀県が取り組む17のプロジェクト - ARITA EPISODE2 - 400 YEARS OF PORCELAIN. NEW BEGINNING. -
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有田焼創業400年事業の最新情報をお届けします

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プロユースプロジェクト - NEW ARITA 400 “educe” プロジェクト - report 1

無限の可能性を「料理」に込めて。「うつわ」を作る人・使う人の共演。

五感を刺激し心から満足させる一皿を追求する料理人たち。その料理人たちからの多様なニーズを聞き、それに応えようと努力する「うつわ」を作る職人たち。「使う人」の想いと「作る人」の技の共演による、新しいものづくりの手法を探る「プロユース・プロジェクト」の可能性をレポートする。

February 09, 2015
文: 宮崎 伸介

メッセージを具現化できる「うつわ」はどこに?

「低級な食器に甘んじているものは、それだけの料理しかなしえない―」。書や陶芸など幅広い芸術分野において、比類なき美意識を体現し、徹底した美食家としても知られる北大路魯山人はこう断じた。古今東西「食」という世界のなかで、「うつわ」は、料理の味ひいては五感を左右するほどの重要な役割を担う、もうひとつの「主役」である。もはやこれは食文化における自明の理(ことわり)だろうし、開窯より常にうつわの生産が主であった有田焼も変わらない。ところが現在の有田焼は生産が落ち込み、いまだ減少に歯止めがかからない状況が続いている。大口ユーザーであった高級割烹や旅館における「業務用食器」の需要が大きく縮小していることが要因のひとつだ。

プロユースプロジェクト

一方、料理の世界では和洋を問わず、既存の料理のメソッドから解放された「創造力豊かな」調理法や組み合わせが注目され、料理人の表現の幅が格段に広がった。これは料理人たちが味わう人に向け、料理にはもちろん、うつわにも「メッセージ」を強く込めるようになった、ともいえるし、料理人たちの多様なニーズに応えるうつわには「需要がある」ことを示唆している。

今までとは全く異なるアプローチで、料理人たちがそれぞれに思い描くうつわを「オーダーメイド」で生産しよう―。有田焼の産地の事業者が結集し、国内外のトップシェフ自らが料理論や手法、うつわ使いなどを披露するアカデミーを開催。「使い手」となるプロの志向や動向を反映した商品づくりを行いながら、産地自らが商品開発と市場開拓に乗り出す新たな試みが始まった。

プロユースプロジェクト

シェフたちが挑む、有田の「うつわ」との共作(コラボレーション)

2014年1月、パリのエッフェル塔内の1つ星レストラン「Jules Verne(ジュール・ヴェルヌ)。この栄えある場所にバイヤーやジャーナリストなどを招き、史上最年少で3つ星を獲得し世界各地でレストランを経営するアラン・デュカス氏のプロデュースによる「有田焼のプロモーション」が行われた。通算で史上最高の8つ星を獲得したトップシェフにして大の日本通であるデュカス氏が創り出す「エレガント」な料理を華やかに有田焼が際立たせた。トレンドに敏感で美意識の高いオーディエンスからは「ギャラリーで有田焼の展示会を開催したい。」「専門誌に器を掲載したい」との声が挙がった。

2014年3月、開店後わずか2ヶ月でミシュラン1つ星を獲得した東京・白銀の「Tirpse(ティルプス)」とのコラボレーションイベントでは、新進気鋭の料理人も登場した。佐賀県伊万里市の出身で、フランス・パリでミシュラン1つ星を獲得したレストラン「Sola(ソラ)」のオーナシェフである吉武広樹氏だ。「自分が良いと感じるものを、料理の国籍にとらわれず表現していきたい」という吉武氏の料理のエスプリを際立たせてくれたのは、「同郷」ともいえる李荘窯業所、徳幸、福珠陶苑、福泉窯、やま平窯元といった有田焼の数々。これらのうつわは2014年10月に行われた、イタリアの3つ星レストランの中でも最高レベルと評される「Osteria Francescana(オステリア・フランチェスカーナ)」のスーシェフであった徳吉洋二氏とのコラボレーション・ディナーにも登場。繊細で精緻な手仕事の冴える有田焼が、マインドの高い日本人が創り出すメッセージ性の強い創造的な料理を、ひときわ印象づける「共作」が誕生した。

プロユースプロジェクト
プロユースプロジェクト

有田焼にみる「オーダーメイド」食器の可能性

「ARITA 400project」にも参加するカマチ陶舗は、ラ・トゥール・ダルジャンの料理長を務めた名シェフ、ドミニク・ブシェ氏をはじめとする、料理人とのコラボレート食器を多く生産する、現在の有田の「嚆矢(こうし)」といえる存在だ。

「『Enban(エンバン)』と名付けたうつわがあるのですが、これは失敗作から始まった作品。最初にドミニク・ブシェ氏に見せたところ『とてもいいじゃないか。でもフランス人の指は太いから、サービスしやすいように、ふちをもっと上げて。中身が小さすぎて、これでは盛る料理が限られてしまう』と厳しい評価。開発はフランス人の指のサイズを計ることからはじめました。社内では当初『費用と労力のムダ』とか、『そんなこだわり誰も見ていない』と言われていましたが、今ではあきらめずに挑戦してきた『甲斐』があったと思います(蒲地勝氏)」。使い手の意見を聞き商品開発に反映することは、今やどの業界でも行われているマーケティングの基本。しかし業務用食器の開発では、料理人の意見を取り入れることに前向きではなく、しかも料理人の求める食器をオーダーメイドで生産できることすら、料理業界でほとんど知られていなかった。

地域全体が、高い技術力に裏付けされた「オーダーメイド」で差別化を図る動きが現在、加速している。

プロユースプロジェクト

「トップチーム」によるモノづくりで、市場開拓を

「料理の世界の理想は『愛情のこもった美味しい料理』。しかし世の中には『愛情のこもったまずい料理』もあり、逆に『愛情のかけらもない美味しい料理』もある。有田焼も『手描きだ』というだけでは高付加価値商品にはなりません。有田は最高に売れていた時代の価値観がそのまま。これまでのビジネスモデルに限界が来ている」と語るのは、「スーパー割烹」をコンセプトに、「新・江戸前 東京スタイル」を提供する日本料理店・銀座「六雁」のディレクター 榎園豊治氏。榎園氏は、これまでの有田の常識に囚われず、新しい有田焼のビジネスモデルを構築するために、商社や窯元たちが参加している「プロユースプロジェクト -NEW ARITA 400"educe"プロジェクト-」のメンターを務めている。このプロジェクトを通じて、プロユースの食器開発を担う「トップチーム」となる人材を有田の地に育て、チームが新商品を次々と生産する体制づくりを狙う。

「有田焼が失ってしまったものは何か?『モノづくり』の精神ではないか。どうしてもやってやろうという思い。追い込んで自分を高めていく。シェフたちの、どんなややこしいオーダーも解決できるチームになっていきたい」。

プロユースプロジェクト -NEW ARITA 400"educe"プロジェクト-では、2015年、華々しく新しいプロユースの有田焼を発表することが計画されている。海外ではフランス・リヨンに世界各国のシェフが2万人集結し、外食産業のプロフェッショナルが20万人来場する「シラ国際外食産業見本市2015」に、日本では北海道・函館に、国内外から気鋭の料理人たちが集結し、自らの料理論・手法などを披露し、これからの料理のあり方などを議論する「第5回世界料理学会」、さらに東京では、ホテルや旅館など外食産業のプロフェッショナル向けに開催される国内最大級の展示会である「第43回 国際ホテル・レストラン・ショー」といった、業界から高く注目を集める食の「ステージ」に、新たな商品を続々と登場させるのだ。

うつわを「作る人」と、うつわを「使う」料理人の共演―。新しい「有田焼」の可能性は、果てしなく広がっている。

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